第14章 父と母の恋
ー智sideー
父ちゃんの部屋に入ると…そこには向かい合っていたおいらの父ちゃんと…初めて見る翔くんのお父さん。
想像以上に厳しそうで…厳格そうな人だった。
その横に立つ…執事の影山さん。
父ちゃんの隣には松兄が居た。
松岡「ぼん…!」
「………ただいま」
影山「翔様!」
翔「ただいま影山…」
翔父「………」
背中を向けていた翔くんのお父さんがゆっくりと立ち上がり…こっちにやって来る。
翔「………」
何も言わずに翔くんの前に立ち、無言のまま2人は見つめ合う。
翔父「この親不孝者!!」
翔くんのお父さんの怒鳴り声と共に…肌がぶつかり合う音。
影山「旦那様!」
翔くんは殴られた頬を押さえながらうつ向いた。
翔父「お前は何を考えてる!?美樹さんの目の前で彼女を捨てて…こいつと店を出て行ったなんて…!美樹さんがどれだけ傷付いて泣いていたか!安部総理もご立腹だったんだぞ!!」
翔「………ごめんなさい…」
翔父「謝って済む問題か!!お前のせいで家がこれからどうなるか…!!全部お前のせいだ!!」
翔くんのお父さんがまた手を振りかざした瞬間、おいらは翔くんとお父さんの間に立った。
翔父「退け貴様!!」
「退きません」
翔父「お前が…お前が翔を連れてったんだな」
「はい」
翔父「うちの息子をたぶらかして…。親子2代でよくもやってくれたな」
「2代…?」
智父「………」
翔父「二度と私の息子に関わるな。いいな。うちとお前達とは住む世界が違う。警視総監の息子がヤクザの…しかも男なんかとふしだらな関係などと…恥さらしもいいとこだ。汚らわしい」
そして翔くんのお父さんは…翔くんの腕をつかんで引っ張った。
翔父「帰るぞ」
翔「父さん!いったい!痛い離せよ!!」
翔父「迎えに来てやっただけでもありがたいと思え!!」
翔「離してっっ…!」
「止めて下さい…!」
翔父「黙れ!!」
影山「旦那様!」
松岡「落ち着いて!!」
全員が揉み合いになる中…父ちゃんだけが何も言わずに静観していたのをおいらは見逃さなかった。