第14章 父と母の恋
門の前でタクシーを降りる。
すぐ隣には…見覚えのある車が止まっている。
父さんの車がそこに止まっていた。
「本当に…来てるんだ…」
智くんが隣に立ち、俺の手を握る。
「………ごめん…迷惑かけて…」
智「迎えに行った時から覚悟してる。大丈夫」
「もう…別れたりしないよね俺達」
智「絶対しない。誓うよ。だから…翔くんも何があってもおいらの側に居て?」
「うん」
大きな門をくぐると…そこには俺達を待ち構えていた様に組の奴等が並んでいた。
長瀬「ぼん!」
松岡さんより少し背の高い男性が駆け寄って来る。
智「父ちゃんは?」
長瀬「今応接間に。警視総監の櫻井俊と一緒に居ます」
「………」
智「そっか。分かった」
侑李「ぼん!何でそんな奴連れて来たんですか!」
あの日…俺に色んな事を言ってきた…小柄な男の子。
智「侑李」
侑李「叩き出して下さいそんな奴!ぼん騙されてるんですよ!」
智「騙されてる?」
侑李「温室育ちで苦労知らずのぼんぼんだからヤクザの世界が珍しかっただけです!そいつなんか居ても何の役にも立たない!足手まといなだけです!!」
相変わらず…俺は嫌われてるみたいだ。
智「侑李…翔くんの事何も知らないのに苦労知らずなんて言うな」
侑李「でも…」
智「それにおいらは…翔くんなら騙されてもいいよ」
侑李「ぼん!」
智「ごめんな侑李。行こう翔くん」
「あ、うん」
手を引かれながら智くんに着いて行く。
一瞬後ろを振り返ると…恨みを込めた瞳で俺を見つめてくる知念侑李の姿があった。
智くんの事…愛してるんだよな…。
でもごめん…智くんは譲れない…。
俺は繋いだ手をぎゅっと握り締めた。