第13章 True Love
「智くん…どうして…」
ずぶ濡れの智くんが目の前に立ってる…。
俺は…夢を見てるの…?
智「………相葉さんにここ聞いた。お見合いするって聞いて…」
「雅紀に…?」
智「おいら…馬鹿だった」
「………」
智「翔くんは俺にとって…簡単に忘れられる人じゃないんだって事…やっと気付いた」
「智くん…」
智くんが一歩、俺に近付く。
智「翔くん…愛してる…愛してるんだ…」
「っっ…でも…俺達は…」
智「頭では分かってる。でも…おいらの本能が…君を求めてる。君じゃないと駄目なんだ。家柄とか…過去の事とか…もう…どうでもいい」
「………」
いつの間にか…俺の頬を涙がつたってる。
もう智くんから目が離せない。
智「もし君が…もう一度この手を握ってくれるなら…今度は一生離さない。君が嫌だって言っても。何処までも…地獄だって連れて行く」
「………」
智「君が側に居る事こそ…おいらの人生なんだ。人生の全てだから…」
智くんの手が…俺の方に伸びて来た。
「智くん…俺…」
美樹「翔さん?」
振り返ると…戻らない俺を探しに来たのか、美樹さんが立っていた。
美樹「お知り合いですか?びしょ濡れですよ、大丈夫ですか?」
「美樹さん…」
俺は美樹さんに向かって…深く…頭を下げた。
「ごめんなさい。貴女とは…結婚出来ません」
美樹「え…」
「美樹さんはとても素敵な女性です。だから俺なんかよりもっと相応しいお相手を…見つけて下さい」
美樹「そんな…翔さん…!」
「父には後で話します。分かってくれるかどうか分からないけど…」
美樹「翔さん待って…いや…」
泣きそうな彼女にもう一度頭を下げる。
「俺の事恨んで…忘れて下さい」
そして俺は振り返り…伸ばされた智くんの手を取った。
「智くん…もう二度と離さないで…」
智「離すもんか…!」
「俺も…愛してる…」
智「ありがとう…」
そして俺達は降りしきる雨の中を走り出した。