第12章 10年前の真実
智くんのお父さんが俺のお母さんを殺した。
智くんは…母さんを殺した男の息子。
仇の…息子。
呼び止める雅紀を振り払い、俺は大学を走って出て行った。
それからの事は…あまりよく覚えていない。
ベッドから起き上がらないまま気付けば…とっくに深夜になっていた。
食事にも顔を出さず…「お腹が空くといけないから」と影山が用意してくれたおにぎりが…机の上にそのままになっている。
母さんは…殺された。
智くんの父親に…。
どうして…。
微かに話し声がして耳を済ますと…玄関の方から父さんと影山の話し声が聞こえる。
俺は立ち上がり部屋を出た。
翔父「明日も遅くなるから宜しく頼む」
影山「かしこまりました」
「父さん!」
俺は階段を駆け降りながら父さんを呼んだ。
父さんの冷たい視線が俺に投げ掛けられる。
翔父「騒々しい。夜中だぞ静かにしなさい」
影山「翔様。お身体の具合は…」
「父さん…!どういう事?」
翔父「何がだ」
「母さんは事故じゃなくて殺されたって…どういう事?」
影山「翔様…!」
翔父「………どこで聞いたそれを」
「そんなの関係ない!答えてよ!」
影山「翔様。色々複雑なのでございます。いずれこの影山がお話ししますので」
「俺は父さんに聞いてるんだ!」
翔父「………」
父さんは押し黙ったまま…俺を見つめていた。
「………話してよ…父さん…」
翔父「………来なさい」
父さんはそれだけ言うと書斎に向かって歩き出した。
影山「旦那様…!」
翔父「翔と2人で話す。来なくていい」
「ごめん影山」
影山に相づちを打ち俺は父さんの背中を追った。