第12章 10年前の真実
ー翔sideー
雅紀「大野智居る?」
『さっき屋上行くの見たけど』
雅紀「ありがとう」
「雅紀…?」
雅紀が通りすがりの学生に智くんの居場所を聞くとそのまま言われた場所へ足を運んだ。
「雅紀…どうして…」
屋上の扉を開くと智くんはそこに居た。
雅紀「知られたくないからって逃げるのは…卑怯だ。ちゃんと向かい合えよ。翔ちゃんに話して…翔ちゃんが許せないなら…仕方ないけど…このままだと翔ちゃん気持ちくすぶったままだろ。そっちの方がよっぽど残酷な事してんだよお前は」
智くんに会うと…雅紀は彼にそう言った。
雅紀の言ってる意味が…まだ分からない。
俺を残して立ち去ろうとする雅紀を…智くんは引き留めた。
智「余計な事しやがって」
雅紀「………誰のせいだよ」
智「はぁ…」
暫く見つめ合った後、智くんは俺の目の前へと立った。
「智くん…俺…話が見えなくて…」
智「………だよな」
「………あの…」
智「………翔くん…あんな風に別れてしまってごめん…。でも飽きたなんて嘘だ。君の事…まだ忘れられない」
「智くん…?」
嘘…。
まだ…俺の事…好き…?
智「でも駄目なんだ…」
「どうして…」
智「………」
暫くの沈黙の後…智くんがゆっくりと口を開いた。
智「翔くん…君のお母さんは…事故で亡くなったって言ってたよね」
「………うん…」
智「違うんだ…本当は…」
「え…?」
智「………殺されたんだ。うちの…父親に」
「………何…言ってるの…智くん…」
智「大野組の抗争に巻き込まれて殺されたんだ…うちの…父親が…殺した」
「………」
智「おいらは…翔くんの大切な人を奪った男の息子なんだよ…」
「………嘘でしょ…?」
智「………嘘じゃない。殺した本人から…聞いたんだ…」
「………嘘だ…」
智「………嘘じゃない…」
「嘘だぁっ!!」
雅紀「翔ちゃん!」
気付けば俺は…そのまま屋上を飛び出していたのだった。