第12章 10年前の真実
書斎のテーブルに俺と父さんは向かい合って座った。
煙草を1本…胸ポケットから出しながら父さんは俺を見つめる。
「話してよ…父さん」
翔父「お前の言う通りだ。陽子は…お前と舞の母親は…殺されたんだ。ヤクザに」
「大野組の…組長…?」
翔父「そこまで知ってるのか」
俺はコクリと頷いた。
翔父「………10年前のあの日…陽子は…友人と会う為にあるホテルのレストランに居た。その同じ場所、同じ時間に居たのが…大野組の組長、大野守だ。そこに…敵対する別の組が来て銃撃戦になった。その時…大野守の撃った銃が…陽子に…」
「………」
翔父「しかし逮捕されたのは大野守ではない。後で分かった事だが…後日その場に居る筈の無かった下っぱの組員が自首した。大野守は…自分の罪を償わずにのうのうと生活している。証拠が無かった。お前達には…さすがに言えずに事故だと…伝えていた」
「………」
智くんの言った事は…本当だった…。
智くんの父親が…母さんを…殺した…。
智くんは…母さんを殺した人の…息子…。
「嫌だ…そんな…」
ぐるぐる頭が回る。
誰か…誰か嘘だって言って…。
翔父「翔…」
涙が…止まらない。
「やだ…やだよ…そんなのってない…」
俺は頭を抱えながら…ただひたすら泣くしか出来なかった…。