第12章 10年前の真実
建物を出た所で俺は大野の腕を掴んだ。
「逃げんなよ」
智「………」
「黙ってないで何とか言えよ」
智「………おいらなんかより…貴方の方が翔くんを幸せに出来るよ。だから…」
「それが出来なかったからここに来てんだよ!分かんないのかよ!翔ちゃんずっと…あんたを想ってる。捨てられたって思ってるけどそれでもあんたが好きなんだよ!!せめて元に戻れないなら…理由を言えよ!ちゃんと振って…翔ちゃんを解放してやれよ!!あんな翔ちゃんもう見たくないんだよ!!」
智「………」
「俺もお前も…同じ気持ちだろ?翔ちゃんが好きで…幸せになって欲しいって気持ちが…」
智「出来ない…出来ないんだよ…」
いつの間にか…大野は目に涙を浮かべていた。
「………どうして…」
智「おいらは…翔くんの大事な物を奪った男の息子だ…」
「………どういう事だよ…」
智「………翔くんの母親は…殺されたんだよ。うちの…父親に…」
「………何…?」
智「何度も言わせんな」
「だって…おばさんは交通事故で…」
智「………違うんだよ」
「………」
智「翔くんが知ったら…どうなる?」
「………」
智「おいら達は…一緒に居るべきじゃない。一緒に…居られない。こんな男は…一緒にいちゃいけないんだよ」
「………でも…」
「もう…帰れ」
俺の腕を振り払い…大野は歩いて行く。
俺は…これ以上大野を追う事が出来なかった。
殺した…?
大野の父親が…ヤクザの父親が…おばさんを…。
頭が…痛い…。
俺は暫くの間そこを動くことさえも出来なかった…。