第12章 10年前の真実
ー雅紀sideー
殺してやりたかった。
俺の気持ちを弄んだ翔ちゃんと…翔ちゃんの心を掴んで離さない大野智という男。
風間の結婚式のあの夜から…翔ちゃんの顔を見たくなくて翔ちゃんを避けていた。
会わない様に学校にも遅れて行って…。
でも考えるのは翔ちゃんの事ばかりで…。
翔ちゃんの顔が頭から離れない。
翔ちゃんに会いたい…でも…会いたくない。
俺は…翔ちゃんじゃないと駄目だった。
でも翔ちゃんは…あいつじゃないと駄目なんだ。
大野智という男じゃないと…。
気付けば俺は…あいつが通ってる大学まで足を運び、探し回って会う事が出来た。
一発殴ってやろうかと思ってたけど…いつの間にかその気持ちは失せていて。
「翔ちゃんの側に居てやれよ」なんて…。
ああ…俺ってお人好しだな…。
心の何処かで思ってしまっていた。
智「………出来ません」
うつ向く大野から出た言葉は予想外の言葉だった。
「は…?何で…何でだよ」
智「おいら達はもうとっくに別れてるんです」
「だから…俺の話聞いてんのかよ」
智「話はそれだけですか」
「待てよ…」
智「すみません今忙しいから」
そう言って大野はスタスタと講習室を出て行ってしまう。
「待てよ!」
俺は大野の背中を追った。
俺の声にも一切振り向かずに大野は去って行った。