第12章 10年前の真実
雅紀「私の事…覚えてますよね」
おいらよりかなり背の高いその男は…真っ直ぐにおいらを見つめている。
「………結婚式で…翔くんと…」
雅紀「ええ。相葉雅紀といいます」
「どうしておいらを…。ここが…」
雅紀「翔ちゃんから全部聞いてますから。去年のこの大学の文化祭で貴女と出逢った事。付き合って直ぐにあんたが翔ちゃんを捨てた事もね」
「………」
雅紀「あんたがヤクザっていうのも知ってる」
最後の言葉は…周りに気遣って聞こえない様にボソッと言ってくれた。
「それで…おいらに…何を…」
雅紀「俺…あんたと翔ちゃんが別れてから付き合い出した。この5ヶ月…毎日一緒に居たよ。ずっと」
「………」
雅紀「翔ちゃんあんたに失恋して…ぼろぼろだった。入院した事もあったんだよ。それだけぼろぼろだったんだ。あんたが翔ちゃんをゴミ屑みたいに捨てたからな!」
「………」
彼の言葉が…たくさん胸に刺さる。
当たり前だ。
そうやってわざとポイ捨てしたのはおいら。
傷付いて…早く忘れて欲しかったから…。
雅紀「あんたなんかより俺の方が翔ちゃんの事愛してる。小さい頃からずっと愛してた。だから…恋人に昇格出来て嬉しかった。これでやっと…翔ちゃんは俺の物になるって。でも…駄目だった。5ヶ月頑張ったけど駄目だった…。何でか分かるか?」
「………」
雅紀「あんたの事愛してるからだよ!そのせいで…翔ちゃんは一度も俺を恋人として見てくれなかったんだよ!お前のせいで!!」
講習室に響く大きな声。
何事かと周りがおいら達を見ていた。
雅紀「あんただってそうだろ。俺達のキス見て固まってただろ。なぁ何で?何で別れたんだよ…」
「………それは…」
雅紀「頼むよ…。翔ちゃんの側に居てやれよ。あんたじゃないと駄目なんだよ翔ちゃんは。頼むよ…」
涙を浮かべながら相葉という男は…おいらに向かって頭を下げた。