第11章 再会
ー雅紀sideー
まさか…こんな所で会うなんて。
翔ちゃんの忘れられない男に…。
ヤクザの息子なんて言うから…どんだけ強面の男だろうって思ってた。
でも…ヤクザになんて到底見えない。
優しい雰囲気の垂れ目。
幼い顔立ち。
小柄な身体。
まとってるオーラは…ほんわかした…緩やかな空気が流れてる様な人だった。
翔「………」
智「………」
「知り合い?」
黙って見つめ合う2人に…俺が割って入る。
わざとらしく…翔ちゃんに聞いた。
翔ちゃんを…抱き締めながら。
翔「あ、えと…」
翔ちゃんが言葉を濁す。
俺の中で…沸々と黒い物が込み上げてきた。
「男同士のカップルがそんなに珍しい?お兄さん」
智「………いや…」
「せっかくいいとこだったのに…邪魔しないでよ。ねぇ翔ちゃん」
翔「雅紀…止めて」
「行こう。式が始まるよ」
俺は翔ちゃんの手を引きながらその場を去った。
俺に腕を引かれながら…翔ちゃんは何度も後ろを振り返ってた。
翔「雅紀痛い…痛いよ…!」
「あ…」
我を忘れて…腕を強く引いてたみたいだ。
慌てて腕を離す。
「ごめん…」
翔「………」
翔ちゃんは何も言わずにうつ向いた。
「ごめん…翔ちゃん」
翔「………ううん。大丈夫」
そう言うと…翔ちゃんはにっこりと微笑んだ。
翔「ね。せっかくの結婚式だから…楽しもう?」
「そうだね…」
そして会場に入る翔ちゃんの後に付いた。
翔ちゃん…さっきの男の事…どうして話してくれないの?
智って…元カレだよね。
どうして?
風間の結婚式だから話さないの?
それとも…。
俺は…その日ずっと悶々とした気持ちに取り憑かれてしまったんだ…。