第10章 lt laid the rail
雅紀「え…お見合い?」
「………うん…」
雅紀「そっか…」
大学の昼休み、今日のカフェテリアでの昼休みはお通夜みたいなものだった。
お見合いの事を話すと…雅紀は静かに耳を傾けて聞いていた。
「父さんが認めてくれたと思ったのに…違ってた。自分の出世の為に…利用してただけで…」
雅紀「おじさんがそんな事するなんて信じられないね…」
「俺が悪いのかな…目も合わせてくれない…」
雅紀「翔ちゃん。翔ちゃんは悪くないよ」
雅紀が俺の手を握る。
雅紀「話し合えばきっと分かってくれるよ。翔ちゃんの事。だって…息子なんだから」
「うん…」
雅紀はやっぱり優しい…。
あんな事があってから…気まずくなるかと思ったけど…変わらずに接してくれる。
一緒に居られる時はずっと隣に居てくれる。
なのに…どうしてだろう。
俺の心に居る人は…違う人で…。
こうやって雅紀に甘えてるのに…彼の事ばかり想ってる。
どうすればいい?
やっぱりもう一度逢いたいよ…智くん…。
雅紀「翔ちゃん?どうしたの?」
「え?あ、ごめん…」
雅紀「平気。明るい話しようか。あのさ、俺…夏休みバイトするんだ」
「バイト?」
雅紀「うん。前に話しただろ?翔ちゃんと一緒に旅行に行きたいって。夏休みバイトしてお金貯めるから…どっか行こう」
「俺なんかと…良いの?」
雅紀「翔ちゃんが良いんだよ。だから待ってて。一緒に行こう」
「うん」
俺は笑顔で頷いた。
きっと忘れられる。
だって…雅紀はこんなに完璧な人なんだから。
雅紀だけを見ていればきっと…彼は消える。
俺は…そう信じていた。