第10章 lt laid the rail
父さんを待っていた。
食事の後、書斎の椅子に腰掛けて父さんを待った。
ちゃんと話がしたい。
ずっと姿勢を正して待っていた。
時計を見ると…もうすぐ23時。
「………帰って来ないのかな…」
そう思った時、足音が聞こえた。
立ち上がった瞬間、父さんが中に入って来た。
翔父「………」
「お帰りなさい」
翔父「………書斎には勝手に入るなと言ってるだろう。出て行きなさい」
朝と同様…父さんは俺と目を合わせない。
「父さんと話がしたくて」
翔父「仕事が残ってる」
「お願い謝らせて…。この間はごめんなさい」
翔父「………」
「あんな事言って…ごめんなさい」
翔父「ごめんなさいというのは…どういう事だ」
「それは…」
翔父「自分がホモだっていう事を謝ってるのか」
「………ホモ…」
グサリと、父さんの言葉が心に突き刺さる。
翔父「謝罪するという事は…私の言う通りにするんだろうな」
「………父さんの言う通り…?」
翔父「美樹さんと婚約しろ。そして大学を卒業したら結婚するんだ。私の跡を継ぎなさい。男なんかとの汚らわしい関係はすぐ終わりにしなさい。そうしたら…水に流そう」
「………そんなに…いけない事…?男が好きだって…。たまたま…好きになった人が男の人だったんだよ。ホモなんかじゃない。そんな言い方…」
翔父「何が違う。同じだろう。息子がホモだなんて…恥さらしもいいとこだ。縁を切られないだけでもありがたく思いなさい」
「………父さん…」
翔父「自分の非を認めるまで父さんなどと呼ぶな。出て行きなさい」
「待って…」
翔父「出て行け!」
俺は…摘まみ出される様に部屋を追い出されたんだった。