第1章 夜明け前
ー翔sideー
「学園祭?」
雅紀「そう。今度の日曜日」
「いいけど…何で美大の学園祭?雅紀興味あったっけ?」
雅紀「そんなに。でもそこに行く友達に誘われててさ。でも急用で行けなくなったからチケット貰ったんだよ。これ」
「ふーん…美大かぁ」
雅紀に見せられたチケットを取り、マジマジと見つめた。
雅紀「そこの展示室有名どころの画家さんの作品集めてるんだって」
「有名どころ…ピカソとか?」
雅紀「ははっ。いくらかかんだよ」
「ふふっ。いいよ。行こう」
雅紀「ありがとう。良かった」
「ちょっと息抜きしたいしね…」
そう呟いて俺はカフェテリアの席から外の中庭を眺める。
雅紀「………大丈夫?」
「ん?うん…まぁね」
雅紀「………お父さんと上手くいってないの?」
心配そうに雅紀の瞳が動く。
「そんなんじゃ無いけど…受験前だから…心配みたい。この間の模試も下がっただろ?だから…」
雅紀「下がったって…内部受験クリア出来るのに充分だったろ?学年でもトップだし…ましてや生徒会長なんだから…」
「ありがと雅紀」
雅紀「翔ちゃん…あまり自分を追い詰めたら駄目だよ。翔ちゃんの悪い癖」
「うん…」
中学から一緒の雅紀は…俺の親友で…俺の事1番分かってくれてる相手。よき理解者。
「雅紀が大学も一緒でいてくれたらなぁ…何で理工学部なんだよ」
雅紀「俺に経済学部は無理だよ」
「そんな事ないって」
雅紀「あるよ。それに大丈夫。1、2年はキャンパス同じでしょ。いつでも会えるよ」
「そうだけど…」
雅紀「会いに行くから。翔ちゃん放っとけないもん」
「何だよぉ」
雅紀「ははっ」
膨らませた頬を雅紀はツンツンした。
こうして気持ちを和ませてくれるのも…雅紀だけで。
優しい親友の微笑みに俺は次第に癒されていった。