• テキストサイズ

【刀剣乱舞】守護者の恋

第7章 咲弥という守護者(2)


束穂はぽつぽつと、絞りだすように言葉を紡いだ。
「桜の樹の根元に……掘り起こすようなお力がなかったゆえ……わたしが埋めました……何なのかはお聞きしませんでしたが、多分それが」
「そうか。女性の手で大変だったことだろう。それは、我らが取り出しても良いのだろうか」
「いえ……まだ、皆様がここに留まっておられるお力を無駄に使うことになるかもしれませんから、わたしが」
そう言った瞬間、束穂の両眼に熱い涙が浮かび上がった。
審神者の死は、どれほど覚悟していても悲しい。それの引き金になったのが自分の力だと思えば、更に失望は深くてつらいものだ。だが、まだどこかしら実感がわかずに戸惑いの方が強い。
きっと、ここにいる三振の刀達は見えない何かでつながっていて、束穂よりもずっとずっと実感しているだろうに、自分はそうではない。
言葉にすれば、常にそこにあった疎外感というものが、こんな時にも。
(このお三方がいつまで付喪神としてここにいられるかがわからないから、最悪の状況ならば、共に消えてしまうことも考えておられたから、わたしに託したのだ)
どこまでも。
どこまでも自分は彼らを傍観する立場で。
この本丸のすべてを看取るためにここに存在しているのだ。
束穂はそのことを改めて感じて、深い孤独に苛まされながら立ち上がった。
スコップを片付けてある納屋へ行くため、障子を開けて廊下に出ると、背後に漂い続ける悲しみをより一層強く感じる。
自分だけがまるでさっさと立ち直って日常に戻るような、そんな後ろめたさ。それから、なんだか自分がいてはいけない、間違い探しの間違いのピースが自分なのではないかという気持ちになる。
(いっそすべてが夢であったら)
どこから夢だったらよかったのだろうか?
そうだ。
自分が自分の力を自覚した頃から。
すべてが、夢だったら。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp