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【刀剣乱舞】守護者の恋

第2章 守護者の秘密


その晩、束穂はうまく眠りに入れなかった。思い出さないようにと必死に閉ざそうとしていた記憶が掘り起こされて、映像を脳裏にちらつかせる。
あの本丸。そう、実験的に作られた本丸で起きた悲しい出来事。
最初に、人としての姿を保っていられなくなったのは小狐丸だった。
審神者が息を引き取った本丸から、三振の刀達はそれでも出陣した。
その時、本丸は移し身を現代に置いたまま、本丸ごと時を遡っていたため、彼らは審神者の力を借りずとも過去に出陣をすることが出来た。
戻ってこられたら良いのだけれど、と悲しげな笑みを向ける三日月に束穂は「あなた方が帰るここを、わたしがお守りしますから」と告げた。
だが、戻ってきたのはニ振の刀だけで。

「わたしももうすぐここから去ることになるようです」

石切丸はそう言って、けれども最後まで審神者と共に過ごしたその本丸で静かに「いつも通り」にその夜布団に入り、明け方には姿を消していた。
そして三日月は。

ああ、あの美しい刀は最後まで主の思いを背負って、その姿を保っている間戦い続けて。誰も手入れをしてくれないままその身を傷つけて。

けれど、彼は一度足りと、小狐丸達のように早く消えたいなどと口に出さなかった。
その様子を見て耐え切れなくなった束穂が本丸を現代に引き戻し、彼を出陣させなくなって数日後、傷ついたままの三日月は「あなたを恨んではいません」と微笑んで。

誰か。誰か。他の、審神者になれる人はどうして来てくれないの。他の人のちからでは助からないの?
この実験はこれで終わりで、傷ついたこの人のことはどうでも良いと思っているの?

泣きながら、誰もいなくなった本丸にうずくまり続けた束穂は、その本丸の空間を封印して誰にも入れぬようにと無意識に力を使った。
結果、そこから出ることが自分でも出来なくなり、衰弱して。
そんな彼女をまたも助けてくれたのが、今の本丸の審神者だったらしいが、力を使い果たして深い眠りについていた彼女にはその付近のことをまったく知らない。

(ああ、駄目だ。思い出さないように)

違うことを考えなければ。
そうだ。小夜はご褒美をもらえたのだろうか。明日、そっと聞いてみよう……。

そう気を逸らそうとしても眠れぬ夜は長く、束穂は過去を悔やみ続けて暗闇で悲しい時を過ごした。

二章完
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