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【刀剣乱舞】守護者の恋

第19章 改変の傷(2)


「じゃ、話早くていいな。俺っちがみんなに言っちまってさ」
さらりと話を戻す薬研。
彼こそ実は加州が「無粋」と思っている勘繰りをして気を利かせているのだろうが、束穂はただただ「助かった」と思うだけだ。
「おかげで今日は朝から大将に怒られて、乱も巻き添えってやつだ」
ははは、と笑う薬研に、審神者は苦笑いを見せた。
「怒っちゃいない。本能寺のアレが起きた日に、薬研が長谷部に言わなかったことが奇跡だと思っていたからね」
「大将、俺っちのこと信用してないのかい?」
「している。口止めをしたが、いつ薬研が誰に言っても、それは必要なのだろうと信じていたから怒らない。勿論、守ろうとしてくれた乱のことも」
「ちぇ、これだから大将には勝てねぇんだよな」
薬研がそう言うと、小声で加州は「勝てるわけないじゃん」と半笑いで囁く。それへ薬研はにやにやと「たまには勝ちたいねぇ」と返した。
ようやく気を持ち直して束穂はみなに茶を配り、下座の「いつもの場所」に収まる。
「石切丸の件もあって、昨日上層部とずっとやりとりをしていたんだけどね」
一同はぴたりと一切のおしゃべりをやめて耳を傾ける。
「サンプルは少なすぎるし、正直納得できる理論がある世界ではないけれど、上層部側が断言してるってことは信じられる話だと思う」
何の話だ、と逸る心をみな抑え、彼の言葉を待つ。
「折れなければ、二度目の顕現では、記憶を保持することが約束された」
「へっ?」
妙な声をあげたのは薬研だ。
みなは、審神者の言い回しに「え?それって、えーと、折れなかったら忘れないってこと?」と一瞬悩み、反応が遅れる。
「それには当然約束事があって。石切丸が以前の本丸での顕現を解いて刀に戻り、そこからまたわたしの顕現までの間に刀身破損があれば、記憶の損傷もやむを得ない。破損がないと仮定して、約束される」
「でも、石切丸さん、覚えてないんでしょう?」
珍しくこんなメンバーの中で審神者の部屋にいる乱は、こういう時に口を挟んでよいのかと様子を伺いつつも質問をする。
「そう。約束が果たされなかったということだ。だが、調査によると、彼の刀身は前本丸の顕現から破損はないみたいでね。勿論、劣化などはあり得るとしても、おかしいんだよね」
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