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【刀剣乱舞】守護者の恋

第1章 守護者の日常


疲れた体には甘いものを、と黄色と紫2色の芋を使って茶巾絞りを作ったのは、宗三と彼が率いた遠征部隊へのねぎらいだ。
彼らが戻ったのと然程変わらぬ時刻に、審神者も長谷部達と戻ってきて「また明日相談に乗ってくれ」と頼まれた。
おやつの時間から程なく本丸の台所へと向かえば、お願いをしていた野菜がきっちりと並んでいた。畑番だった獅子王と鳴狐、どちらかと言えば多分綺麗に並べるのは鳴狐か、なんて想像をしつつ夕餉の下ごしらえを手早く始める。
その日の食材に好き嫌いがあるのが誰なのか、本人から聞いたわけでなくとも、給仕当番達と毎日交わす僅かな会話からおおよそは把握ができている。今日は嫌いな野菜でよく名前があがるにんじんをあえて選んだ。油と組み合わせると良い野菜だから、一気にスライサーで細くしてツナと卵で炒めものにすると案外ぺろりと食べてもらえる。
ピーマンがダメ、ナスがダメ、辛いの嫌い……30人いれば全員が喜ぶ献立を考えるのはなかなか難しい。週に一日だけ完全にオフの日があるが、それも朝食は前日の夜に作り置きをして温めてもらうようにしている。
完全に本丸の刀達は、彼女を「頭巾を被った物静かな家政婦」だとしか思っていないだろう。それに不満はない。むしろ、それで良いと思う。
「お疲れ様ー」
朝と同じように燭台切、山姥切、安定、秋田が時間通りに台所に顔を出す。それを待たせることなく、炊いてしっかり蒸らした業務用の炊飯器とまたも味噌汁を大量に作った寸筒をテーブルに置くと、また朝のように彼らが勝手にその先をやってくれる。
「ねえ、束穂」
「はい?」
夜のしゃもじ担当は安定だ。朝の山姥切よりは「いつもと同じくらい」の量を茶碗に盛っていく。
「あれ、ねいるあーとってゆーの?」
「……あ、はい」
たったそれだけの言葉で、加州が言った通りの会話が安定との間でされたのだろうとわかる。
「なんかよくわかんないけど、束穂がやってあげたっていうなら何か意味があるんだろ。ありがと」
「安定さんにお礼を言われるのは」
「あいつさ、昨日から元気がなかったんだけど、調子戻ったみたいだからね。僕が何言っても駄目だったから、助かったよ」
それでも安定にお礼を言われるのはおかしいような気がしたが、束穂は素直に「どういたしまして」と答えた。
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