第1章 プロローグ
二宮side
さっきからずっと雅紀がなにも喋らずにどっか一点を集中して眺めている。
和「雅紀、さっきから何を見てるの?」
雅「え?…あぁ、…ねぇかず。あの人ってもしかして…大野さんかなぁ」
和「大野?誰それ。初めて聞いたけど…有名な人なの?」
雅「うん。有名な全盲の画家」
全盲の画家?
目が見えないでどうやって絵を書くんだ?
全盲ってことで同情を買ってたいして上手くもない絵を売りさばいてでもいるのか?
そんなことを考えている間に雅紀は
雅「…やっぱ大野さんだよ。俺ちょっと行ってくるね!」
和「あっ、ちょっと雅紀っ!」
いくらなんでも話し掛けるのは止めとけよ!と言おうと思って雅紀を連れ戻そうと追いかけた時には遅かった。
既に雅紀はその“全盲の有名な画家大野”に話し掛けていた。
そして握手も交わしていて。
あ~あ…大野って人、いきなり話しかけられて握手まで求められて困ってるぞ…。
するといきなり雅紀にかずもしてもらいなよ!とか言われて半ば強引に握手をさせられた。
一応お礼を言ってから店を出た。
雅「ねぇ、かずの時だけ妙に握手の時間長くなかった?」
和「えっ…そう?」
雅「そーだよ!いいなぁって思っちゃったもん。」
そうかなぁ…
俺と握手してる時だけあの大野って人、表情が曇って見えたけど…。
ま、気のせいか。