第3章 始まりは…
二宮side
― ピンポーン ―
雅「・・・はーい!鍵開いてるから入ってー」
ガチャッ―———バタンッ
和「っもー、ちゃんと鍵は掛けろっていつも言ってるだろ?」
そういいながら鍵を掛けてから靴を脱いでいると、玄関の目の前に広がる長い廊下から雅紀が小走りにやってきた。
雅「えー、でもかずが来ること知ってたし?」
和「それでもダメなものはダメなの!」
雅「はーい。」
しゅんとしている雅紀を横目に俺はリビングへと進んでいった。
雅紀の家にはよく遊びに来ているから間取りは把握している。
リビングにある大きなソファに勢いよく腰を下ろすと、
雅「ねぇ、かず・・・さっきまでどこ行ってたの?」
急に雅紀が聞いてきた。
まるでさっきの智さんとのことを知っているみたいな口ぶりで。
和「なっなんだよ。別にどこも行ってねーし・・・」
雅「うそ。何か隠してるでしょ。なにがあったの?」
いつになく真剣な表情で問い詰めてくる。
和「どっ、どうしたんだよ…なんかあった?なんか俺変??」
雅「なんか和・・・今日いつもと違う香りがする」
そう言うと突然雅紀が目の前まで迫って来て。
和「ぅえ、ちょっ、なに!?」
ソファの背もたれに両手を押さえつけられる形になり焦っていると
雅「和・・・俺ね、不安なんだ」
そういい、俺の両手を押さえ付けていた手を離して急に泣き出した。
和「え・・・ちょっ、ちょっと雅紀!?どうしたんだよ!」
急に泣き出した雅紀をどうすることもできず、ただ背中をさすっているといつの間にか寝ていた。
和「ほんと…どうしたんだよ、雅紀……」
そうつぶやいた後、俺も眠りに落ちた。
和「ん…ぅ」
雅「あ、かず起きたー?顔洗っといで、もうすぐで出来るから」
まるで昨日泣いてなどいなかったかのような明るい表情の雅紀に戸惑ったけど
和「…へーい」
雅紀がなかったことにしたいのならそれでもいいと思い、いつも通り返事をして洗面所へと向かった。