第4章 アナタ ト イキタイ【イケメン戦国】
「前にさ……話しただろ。
俺の故郷の話。」
「うん。」
幸村の片腕に抱かれて、その胸に頬を寄せながら私は頷いた。
まだ2人とも汗だくで呼吸も荒いままだったけど、この気だるさが今はとても心地好い。
「本当に良い所なんだ。
此処よりずっと田舎で何も無いけど、山も川も綺麗でさ。
住民も気の好い奴等ばかりで……」
遠い目をして語る幸村がどこかに行ってしまいそうな気がして、私はギュッと幸村にしがみ着いた。
「どうした?」
「だって…幸村が遠くに行っちゃいそうで……」
幸村は吹き出すように笑うと身体を傾けて、今度は両腕で私を抱き締めてくれる。
「馬~鹿。
何処にも行かねえよ。」
「ホントに?」
「ああ…俺が何処かに行く時は必ずお前も一緒だ。」
「幸村……」
「今直ぐには難しいかもしれねえけど、
何時か戦の無い世の中になったら……
お前を連れて帰りてえんだ。
俺の生まれた場所をお前に見て欲しい。」
幸村の言葉にジワリと涙が滲む。
「本当はお前の生まれた場所も見てえけど、
俺、500年は生きられそうにねえしさ。」
幸村も私の言った事、信じてくれてるんだ。
それが嬉しくて…幸村の言い方が可笑しくて…私がクスッと笑うと
「ほら、今泣いた烏がもう笑った。」
幸村の指先が私の鼻をチョンとつついた。
「お前は何時も笑ってろ。
この先、絶対にを泣かせたりしねえから
ずっと俺に着いて来い。」
幸村……あなたを愛してる。
この想いをどうやって伝えたらいいだろう?
言葉なんかじゃ足りないよ。
これから幸村がどこへ行こうと私もずっとずっと一緒に……。
私は幸村の頬に口付けてから、そっと耳元で囁いた。
「あなたと行きたい。」
幸村エンド 了