第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「貴様との決着を付けに来た。」
「はん!
俺(おい)としても武士(さぶらい)との斬り合いは望む所よ。
負ける気なんぞ無かぞ。
なあ、貴様(きさん)……
を一人遺して逝く覚悟は出来ちょるか?」
を一人で遺して逝く覚悟……
そんなもの有る筈がないだろう。
何故なら俺は、に背中を押されて此処へ来た。
島津豊久との決着を付けに行くと言う俺を
『土方殿の思うままに。
唯、私はいつまでも待って居ります故。
必ず私の元へ《生きて》戻って下さいませ。
どうか、ご武運を。』
そう言って笑顔で送り出してくれたのだ。
ああ……俺は《生きて》の元へ戻らねば。
「未だ俺を『武士(さぶらい)』と称してくれるのだな、お前は。」
「武士(さぶらい)じゃろうが?
今の貴様(きさん)は良か面構えをしちょる。
斬り合(お)うのも惜しか気がするが
じゃっどん、俺(おい)と貴様(きさん)の戦じゃものな。
是非(しかた)も無か。」
腰の得物へ手を伸ばす島津を、俺は柔らかい声色で窘める。
「済まんが……
もうお前と殺り合う心算は無い。」
この言葉には島津だけでなく、背後の二人も明白に驚きの様相を顕した。
「何と?
俺(おい)を……
島津を憎んでおったのでは無かが?
俺(おい)の命が欲しかったのでは無かがよ?」
「今の俺に取って……
《島津》は護りたいものの一つだ。
俺はと二人で………
生きていきたい。
これが俺の《決着》だ。」