第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
「貴方が好きなの………
左之さん。」
…………俺?
は俺の事が好きだったって言うのか?
驚きと動揺を隠せず、狼狽える俺の胸にがそっと身を寄せて来る。
とことん情けねえがその可憐しいを支えてやる事も出来ない程、俺の身体は固まっていた。
「新選組の仕事を手伝う様になって……
自分から引き受けた癖に、緊張と不安で一杯だった。
でも……毎日左之さんが会いに来てくれて…頭を撫でてくれて……
凄く安心出来たし、幸せだったの。
一日に一度、左之さんに会える時間だけが楽しみで……」
そんな風に想ってくれていたのか?
俺だけがを想い、自分勝手にの淫らな姿を想い描いて一人で慰めていた時間が酷く勿体ねえ気がした。
少し勇気を出して手を伸ばせば……お前をこんな目に遭わせる事無く、俺だけが骨の髄まで愛してやれたのに。
「……すまねえ!
こんな事になっちまって何て詫びればいいのか……」
漸く俺が力強くを抱き締めると
「ううん……嬉しかったんだよ。
ああ、やっぱり左之さんは来てくれた……って。」
は俺の腕の中で窮屈そうにしながらも、潤んだ瞳で見上げて来る。
そんな可愛過ぎるを見せられりゃ、もう何一つ躊躇う理由はねえ。
「、俺も…だ。
俺もお前の事を最初っから……」
「あーーー…
一寸待ってくれるかァ?」
想いを伝え合う俺とを黙って見ていた不知火が呆れた様を隠す事無く立ち上がった。