第11章 狂った三日月夜【薄桜鬼】
「悪いな……総司。」
酷く申し訳無さそうに微笑んだ左之さんは、僕の頭をくしゃりと撫でてから部屋を出て行った。
こうなる事は最初から分かっていた。
分かっていたのに伝えられずにはいられなかったんだ。
………僕がどれだけ左之さんに恋い焦がれていたのかを。
………僕がどれだけ左之さんを求めていたのかを。
それでも左之さんは何処までも優しい。
僕が告げた想いをきっちりと受け止めてくれた。
本当だったら気味悪がられても当然なのに……。
「好きだ」と告げた僕に向かって左之さんは「ありがとな」と笑ってくれた。
笑ってから「総司の想いには応えられない」とあっさり僕を拒絶した。
左之さんを恨むなんて筋違いだ。
そんな事は分かってる………頭では…ね。
だけどこの身体中で燻り続ける熱はどうしたら良いの?
自分一人で昇華させるなんて出来やしない。
だったら…………どうする?
だったら…………恨むべきは…………
「……ちゃん。」
僕はその名を呟き、抱えた膝に埋めていた頭をゆっくりと持ち上げた。