第3章 風邪の時間
「移っても知らないから」
「大丈夫だ。
移ったら君に看病して貰うから」
「やだよ」
「僕に移して君が楽になるんならそれでも良い」
「冗談言うなって」
「そうだな。
もう寝て良いぞ」
ポンポン、と背中を叩いた。
「ガキ扱いすんな」
熱下がって来たか。
「今だけだ」
「…覚えてろよ」
今だけ、なんだから。
「良いから寝てろ。
そして早く治せ。
でないと話の合う人間が居ない」
「はいはい。
じゃあもう寝るからこのままそれしてて」
それ…手のことか。
ここでからかっても良いが、またヘソを曲げるんだろうな。
僕の胸の中で穏やかな寝息を立てている赤羽に、微笑みが零れる。
起きたらまたいつもの赤羽に戻っていて、さっきの様子なんて微塵もないんだろ。
それでも良いから、早く良くなってくれ。
でないと…調子が狂うんだ。