第6章 第陸ノ獄.子守唄
お化け屋敷に入ると、麗紅は興味津々で周りを見渡す。
「わぁ…地獄と全然違いますね」
「まぁ、人間の想像で作られていますし、このお化け屋敷のテーマは墓地ですからね」
「テーマによって雰囲気が違うのですか?」
「はい。いろいろとパターンがあって面白いですよ」
「今度、他のお化け屋敷にも行ってみたいです。きっと随分先のことになってしまうかもしれませんけど」
そう言って苦笑する麗紅はどこか寂しそうで、鬼灯はハッとした。ずっと仕事ばかりで、プライベートの時間がなかなかつくれないことを麗紅は顔には出さなかったが寂しい思いをしていたのだと。
鬼灯はそんな麗紅の頭を優しく撫でた。
「…また来ましょう。何年先でもいいです。また2人で、現世のお化け屋敷巡りをしましょう」
「!はい…♪」
麗紅は寂しさが吹き飛んだように屈託のない笑顔を見せる。たったそれだけのことで、鬼灯の心は暖かく、満たされていった。
「…あなたは凄いですね…」
「?なにがですか?」
「いえ、なんでもありません。先に進みましょうか」
「はい♪」
2人は手を繋いで先へ進み、いろいろな仕掛けにワクワクしている。そして外に出ると、麗紅はご機嫌で後ろを振り返った。
「加々知さん…?」
後ろにいたはずの鬼灯が、いつの間にかいなくなっていた。