第4章 第肆ノ獄.想い
部屋に戻ってきた2人。気まずい沈黙が流れ、麗紅は困惑していた。
(どうしよう…鬼灯様、怒ってらっしゃるかな…)
犯人を殴っている時の鬼灯の顔を思い出し、麗紅は不安になった。
鬼灯があんなにも怒っているのを見たのは初めてで、どうしたらいいのかわからないまま静かな時間が流れていった。
そして、口を開いたのは2人同時だった。
「鬼灯様っ」「麗紅さん」
麗紅は鬼灯の言葉を遮ってしまったことに焦り、わたわたと落ち着きがなくなってしまった。
「す、すみません、鬼灯様!お話を遮ってしまって…その、あの…」
「…落ち着きなさい。怒ったりしてませんから。同時だったもので驚きはしましたが」
「は、はい…」
麗紅が落ち着いたのを見て、鬼灯は改めて口を開いた。
「…麗紅さんから話してください」
「えっ?えぇと…その……怒って…いらっしゃいますか…?」
鬼灯はその質問に、珍しく拍子抜けしたようなきょとん…とした顔で麗紅を見た。
「…なぜ、そう思ったんですか?」
「……鬼灯様が…あんな風に怒るのを…初めて見たので…。もしかしたら、私にも怒っておられるんじゃないかと…思って…」
「…そうですねぇ…少し怒っていますよ」
「ビクッ…も、申し訳ありません…」
「あぁいえ、怖がらせるつもりではないのです。謝らなくていいですから、顔を上げてください」
麗紅は不安そうに鬼灯を見上げる。涙目で潤んだ瞳に、無意識の上目遣い。鬼灯の理性は一瞬揺らいだ。