第5章 離さない、永遠に。
「はあ…。」
牡丹は今、一文寺家の全てのトイレ掃除を1人でしている。掃除をする原因が自分のせいじゃない事に、苛立ちながら掃除をしている。
話は2時間ほど前に遡る。
「仕事をサボった罰です。」
「わかりま…した…。」
牡丹はメイドの仕事をしなかった間の罰を与えられた。実際は「したかった」のに「できなかった」。
仕事が出来なかった間「ハヤト様に監禁されていて出来ませんでした!」なんて言っても、飛んだ言い訳だと信じてもらえないと、わかっているので敢えて言わない。
されたくてされたわけじゃないのに…。と思いながら牡丹はトイレ掃除をしていた。
幸いな事に、1階のトイレは執事とメイドしか使わないので、個数も少なく苦労せずに掃除をする事ができている。
「最後の階だ!」
牡丹は2階の掃除を終え、3階のトイレで絶望した。
トイレの個室は1つしかないのに、1階のトイレ全体と同じ広さだったから。それに、トイレの便器も他の階と違って白く、床も壁も大理石なのか、ガラスのように牡丹の姿を映し出す。床の大理石には、所々に宝石に詳しくない牡丹でも高いとわかる宝石が埋め込まれていた。
「よしっ…!これが終われば、休憩だから頑張る!」
気合を入れ、トイレの掃除を始めた時、トイレの扉ががちゃりと開き、そこには見覚えのある姿が立っていた。
「…あれ?
なんだ、牡丹。」