第3章 離さない、汚してあげる。
メイドの朝は早い。
なんせ、ハヤトが起きる前に料理や部屋の掃除をするからだ。
メイドの長?である黒井は40代ぐらいである。黒井は寝ているメイドを起こす。
牡丹は昨日の疲れで爆睡していたところを、起こされた。
牡丹は料理の仕事を任せられた。
まだ半分寝ている体を起こし、メイド服に袖を通す。
「みんな下がれ。」
料理がテーブルに並べられてたちょうどに、ハヤトがダイニングに姿を現した。
これが一文字家の習慣のようだ。
「はい。」
メイドと執事が一礼し退出する。
牡丹も隠れるように退出しようとした。
「牡丹さんだっけ…?君はここにいて?」
2人っきりじゃなく他の人がいると、昨日のハヤトではない表向きの態度が、牡丹に恐怖を煽る。
ゾクリ
昨日の恐怖が蘇る。
逃げられない。
牡丹は足がすくみ、ハヤトにもわかるほどガクガクと震えている。
「返事は?」
「はい…。ハヤト様」。
パタン
返事と同時にメイドと執事は退出し、扉の閉まる音が、牡丹とハヤト、2人しかいないダイニングに響いた。