第8章 離さない、寂しいよ。
「…ほら、席ついたら?」
「、っ…はい。」
牡丹はハヤトから、1番離れた席に腰を下ろす。
最初から、二人で食べるように並べられていた食事が目の前に置かれている。
目の前にはガーリックとハーブの香りのするチキンが置かれている。まだ出来立てで、薄っすらと湯気が見える。
「美味しいから、牡丹も食べな?」
「はい。」
牡丹の手は震えていて、ナイフとフォークを持つ手がお皿に当たり、静かな部屋にカチカチと音を響かせる。
ナイフで一口サイズに切り、口へ運ぶ。
確かに、とても美味しく、緊張も解け頰が緩む。
「どう?」
「美味しいです!」
「よかった。僕も好きなんだよね。」
何日振に2人はまともに会話をした。
お互いに、その事を忘れさせる食事の時間。
牡丹は、ハヤトがお仕置きをするのは、自分の事を少しでも思ってくれているから、と薄々考え始めていた。