第6章 自由な日々
シュリの昼食の時間になったので、あたし達は帰ることにした。
「じゃあシュリ、また来るね。」
「うん。来てくれてありがとう。」
今回は徹がいるからか、シュリはあまり寂しそうではなかった。
やはり、シュリにとって徹の存在は何よりも心強いのだろう。
「シュリ、またね。」
「はい。紫音先輩もありがとうございました。」
シュリに別れを告げて病室から出ようとすると徹が立ち上がった。
「俺、下まで送ってくるわ。」
「うん。わかった。」
徹にしては珍しい行動だと思った。
病室を出ると、徹が口を開いた。
「七瀬、大丈夫か?」
「え?何が?」
「何がって…正月に泣きながら電話してきただろ。」
「あ…あー…大丈夫大丈夫。何でもないよ。」
「ふーん。ならいいけど。」
紫音はこの話を知らない。
正確には、元旦に徹と電話をしたことは知っているが、あたしが泣いたことは知らない。
紫音は何も言わずにあたし達の会話を聞いていた。
エレベーターの前で徹に言った。
「ここでいいよ。」
「わかった。じゃあまたな。」
「徹。シュリにとってあんたは一番心強い存在なんだろうから、ちゃんと傍にいてあげなよ。」
「おう。…別所。」
徹が紫音を見つめて無言で何かを訴えた。
紫音も徹の目を見て微笑んだ。
謎のアイコンタクト。
以前、シュリともしていた。
「じゃ、また。」
徹は踵を返して病室に戻って行った。
「ねぇ、何なのそのアイコンタクト。前にシュリともしてたよね?」
「気のせいじゃない?」
紫音は意味深な笑みを浮かべながらエレベーターのボタンを押した。