第4章 紫音の両親
「七瀬は凄いね。」
帰り道、紫音が夜空を見上げながらそう言った。
「そ、そう?彼氏の親怒鳴りつけるなんて最悪だと思うけど…。」
紫音の両親は笑って許してくれたが、正直申し訳なさでいっぱいだった。
「いや、俺もあんな風に言えなかったから。花音は恥ずかしくなんかないって。だから七瀬がそう言ってくれた時、嬉しかったよ。」
「そっか…。」
結果オーライ、というやつだろうか。
「俺も、ちゃんと言うからね。七瀬の親御さんに。」
「え?何を?」
「何をって…七瀬さんと結婚させて下さい、って。」
その時の想像をすると少し不安になった。
父は、何て言うだろうか。
紫音の両親みたいに祝福してくれるだろうか。
多少揉め事は起こるかもしれないが、最終的には認めてくれると信じたい。
それに紫音は、誰に紹介しても恥ずかしくない自慢の彼氏だ。
きっと、大丈夫。
「七瀬?」
「な、なに?」
「ボーッとしてるけど大丈夫?疲れちゃったかな?」
「違う違う!大丈夫だよ。」
「そう。なら良いけど…。」
あっという間に家の前に着いてしまった。
今日一日凄く楽しくて幸せだった。
その分、離れるのが少し寂しかった。
「紫音、今日はありがとう。楽しかったよ。」
「うん。俺も楽しかったよ、ありがとう。」
「ネックレスもありがとね?大切にするから。」
「指輪はもう少し待ってね。」
そう言って紫音はあたしの頭を撫でた。
あたしは笑顔で頷いた。
早く大学を卒業したい。
この時は、そればかりを考えていた。