第4章 紫音の両親
その年の12月に、徹が目を覚ましたとシュリからメールが届いた。
その時紫音の家に居たあたしは、すぐに紫音に伝えた。
「紫音、徹目覚ましたって!」
「本当に?」
あたしは嬉しくてシュリから来たメールを紫音に見せた。
「やっぱり羽山君はシュリを置いていなくなったりしなかったね。」
「うん!本当に良かった…後遺症も無いみたいだし。」
「あとはシュリが元気になるだけだね。」
「徹もしばらくリハビリとかあるだろうから、大変だろうけど…。」
「それくらい、羽山君なら大丈夫でしょ。」
あたしと紫音が喜んでいると、花音さんが駆け寄ってきた。
「なにか良いことがあったの?」
「後輩がずっと眠ってたんだけど、目を覚ましたんだよ。」
紫音がそう言うと、花音さんは満面の笑みを浮かべた。
「それは良かったわね。どんなお話しでも、眠ってしまったお姫様は必ず目を覚ますものね。」
「その子、男の子なんだけどね…。」
紫音が苦笑いをした。
あたしは必死に笑いを堪えた。
「あら、そうなの?王子様が眠るなんて珍しいわねぇ。」
徹が王子様…。
ついに笑いを堪えきれなくなったあたしは、大爆笑してしまった。
「七瀬、笑い過ぎだよ。」
「紫音だって笑ってるじゃん!」
「笑ってないよ…っ。」
紫音は必死に笑いを堪えているが、最早笑っているも同然だった。
そんなあたし達を見て、花音さんは不思議そうに首を傾げた。
最近あたしは、紫音の家に居る事が増えた。
しかし未だに紫音の両親と会った事は一度もなかった。