第1章 鳴かずば
外は未だに激しく暴れ回っている。戸の磨りガラス越しに銀時は天を仰ぎ、今はそこにいるだろう人物に語りかけた。
「おい、馬鹿兄貴さんよう。賭けは俺の勝ちだ。オメーの妹、約束通り貰うぞ」
何年も前に常葉と交わした約束を思い出しながら、銀時は堂々と宣言する。
攘夷戦争の最中、基地としている寺の縁側で銀時は刀の手入れをしてていた。それを見つけた常葉は銀時の肩を軽く叩いて話しかける。
「なあなあ『銀ちゃん』。お前、俺の妹に惚れてんだってなぁ?」
「……悪ぃかよ」
どこから銀時の恋を聞きつけたのか。いきなりの野暮な質問に銀時は少し躊躇いながらも答えた。
「くくっ、以外と素直なんだな」
「うっせぇ」
多いにからかいを含んだ常葉の言葉に苛立ちながらも、銀時は悪態一つで我慢する。普段なら憎まれ口を永遠と喋る事のできる銀時だが、惚れた女の兄にはどこか遠慮を覚えた。
「なあ、一つ賭けでもしないか?」
「ああ? 何だよ急に」
「お前が五葉を泣かせたら、妹をお前にやるよ」