第1章 第一叶 人間の弟子
お粥を数分で平らげ、一息つく。
「ご馳走さま」
「見事に平らげましたねー」
小さな狐は嬉しそうに頬を染めた。生まれてこの方、こんな美味しいお粥は初めてだった。
「食事を済ましたのでお風呂に入ってきてはいかがですか?」
「風呂…?」
そう言われて初めて自分がいかに汚れているかを悟った。流石に不衛生のままでいる訳にもいかないだろう。頷き、布団から出ようとした時、障子が開いた。
「そんなみすぼらしい格好されててもこっちが困るしな」
「…喋る狐…パート2…」
今度は大きな狐が現れた。小さな狐とは対照的にズカズカと部屋に入ってきたかと思うと私をヒョイと担ぎ上げた。
「え?!ちょっ」
「檎臥(キンガ)様、もうちょっと丁寧に扱って下さい、客人ですよ」
「客人じゃない」
小さな狐の注意も聞かず、私を担いで風呂場に直行する。客人じゃないって…どういうことだ、私は来たくてここに来た訳ではないのに…風呂場は丁度、私が寝ていた部屋の真反対にあった。そこに入ってから大きな狐…檎臥と呼ばれた狐に降ろされた。
「あんな所で倒れてた時はびびったぞ」
「あんな…所?」
「覚えてねーのか?路地だよ」
路地と言われて最近の記憶を思い起こす。私が倒れていたのは確かに路地だった。その時の記憶を思い出す度、嫌な思い出まで蘇る。
「思い出したみてーだな、あんな所に倒れられてちゃこっちが迷惑だ」
「…好きであそこに倒れた訳じゃない」
「あそこは人間界と人外界の…まあ出入り口みたいなとこなんだよ、邪魔だったついでにお前を拾ってきたんだ」
邪魔ついでに拾うか、普通…てか、やっぱりここは私が生きていた世界とはまるで別ものの世界と言う訳か…。あの世界じゃないだけマシだろう。
「とりあえず、風呂入るぞ」
「うん…って…あんたも入るの?」
「ここ最近、仕事ばっかで入る余裕すらなかったんだよ…ほれ、脱がすから手退けろ」
…ん?…いやいやいや!!!なに言ってんの、この狐!?脱がすって…いやそもそも私、女だけど!こいつオス?いや、明らかオスだよな…自分の中であれこれ、考えている間にもこの狐は結ばれている紐を解いていく。
「じ、自分で脱げるから!!」
「ったく、遠慮すんな、もたもたされるより俺が脱がした方が早いだろ」
「遠慮してない!!脱げるから!!自分で!!」