第5章 同盟
結紀は、立ち上がって遠くの方を見ては高尾に告げる。その言葉ではっとした高尾はすぐに立ち上がっては、羽を羽ばたかせる。そして、結紀に向かって言った。
「俺、高尾和成。お前は?」
まさかのここで、結紀に名乗り出る高尾。名乗り出たことに結紀は驚きを隠せず、口を開けた。だが、すぐに冷静を取り戻して高尾に言った。
「…早く行け…。来るよ。」
「ちぇ、誤魔化されちった。今度、教えろよ~。」
高尾はそんな事を言っては、空へと飛び立って行った。高尾の傷は完全に治っている為、先程への戦いの場に向かったのだった。
高尾と入れ違いのように後から、昴輝と彰が結紀に近付いてきたのだ。昴輝は、何かを感じ取ったのか辺りを見回す。やがては…。
「結紀…鳥族、来てなかったか?」
「気配は感じてた。けど、我が来たときにはいなかった。」
「その鳥族、一体、何しに来たんだろう…?」
「偵察しに来たか?」
まさかの結紀は昴輝と彰の2人に嘘をついた。高尾の存在を知らせていたら、吸血鬼族での大問題が起きるからだ。まして、2人に言ったら、高尾を追いかけて殺すに違いないと思ったからだ。
結紀の心の中で2人に嘘をついたことに罪悪感を覚えていたが、高尾を救ったことには後悔していなかった。何故、後悔していないと思ったのかは、結紀自身でも謎であった。
結紀は、高尾が飛んで行った方向をずっと見ていたのだ。やがて、結紀は静かに息を吐き出して、昴輝と彰に言った。