第5章 同盟
「…鳥族がよく吸血鬼の領土に入ったな。それに、大怪我をしているみたいだね。」
「お前、には…関係な…い。」
高尾は、話すこともやっとであった。高尾の様子をじっと見る結紀。高尾は、戦うこともできなければ逃げることもできない。絶体絶命である。高尾なりに、どうしようかと考えようとしているが、血を多く失っている為、それもできていなくなっている。
すると、結紀はその場でしゃがみ込み高尾と目線を合わせてみて、やがて高尾の怪我をしている部分を見る。結紀でも分かるように、高尾は危険な状態である。
「…このままだと、君、死ぬね。」
結紀の一言に高尾は息を呑み込む。すると、結紀は高尾の傷口である腹部に手をあてる。その行動に驚きを隠せない高尾。
「な、何…する、つもり…だ…?」
「黙っててよ。今から傷口を塞ぐから。」
結紀の言葉を聞いた高尾は更に驚く。それもそうだろう。今現在でも敵同士なのに、敵を助けるというのだから。よく見れば、結紀は高尾の血を利用し傷口を少しずつ塞いでいく。
結紀の手から温もりを感じている高尾。治療を任せてもいいと思った高尾は、瞳をゆっくりと閉じて意識を手放した。高尾が目を覚ますのは、治療が終わり完全に傷口が塞がってからだった。
目を覚ました高尾は、一度、傷口を触る。どうやら確かめたかったらしい。その様子を黙って見ている結紀。高尾は、結紀に向かってお礼を言う。
「サンキュー、お前のおかげで助かった。」
「…ただの気まぐれ。早く出た方がいい。仲間が来るよ。」