第8章 思い出の欠片
そうだ、結紀達は、随分長くお互いに一緒にいた。その感覚は、昴輝の心を強く縛る。とても痛く、とても息苦しい。
「オレは…結紀と彰が結ばれればいいと思ってた。」
「……。」
昴輝の問い掛けに日向は驚きの表情をしながらも、黙って聞いていた。昴輝の瞳は、優しいものでどこか悲しいものを写していた。彰が結紀を好意を持っていたのは、薄々気づいていた。
けど、昴輝も気づいた時には結紀を好意的になっていた。譲るつもりが、この気持ちが発覚してから譲ることが難しくなっていたのだ。とても苦しい状況になっていた。複雑な気持ちになった。
だけど、それでも昴輝は自分の気持ちを無理矢理抑えつけ彰に譲ると決めた。しかし、実際はそうもいかなくなった。彰が死んだ。あの鳳凰族の頭首…赤司によって殺された。いまだに、あの瞬間が忘れられない。
「昴輝……結紀を…まも、って……。」
あの彰の言葉は昴輝の心を苦しめる。今でも押しつぶされてしまいそうだった。
―――なんで、死んじまうんだよ…。オレ達は片方が欠けたらだめなんだよ……。オレは…お前に譲ろうとしたのに…。
昴輝がどんなに思っても彰は帰ってこない。どうしようもない。すると、日向の口がゆっくりと動く。
「要は、彰は頭首を好きだったんだろう?それは、お前も同じじゃねぇのか?お前だって、頭首を好きなんだろ?」
「!!」
図星つかれた昴輝は思わず目を見開き日向を凝視してしまう。