第8章 思い出の欠片
昴輝の表情を見て確信した日向は、ニッと笑って、乱暴に昴輝の頭を撫で言った。
「いいんじゃねぇか?まぁ、死んだ奴はもう帰って来ない。けどな、アイツの想いの分も持ってお前の頭首に伝えるんだ。遠慮することはねぇと思うが?」
「………。」
日向の言葉は昴輝の心に真っ直ぐ届く。何度か彰の目の前で結紀の血を貰ったり、スキンシップをしていた。遠慮しない場面もあったが、全体的に無意識的に遠慮はしていたのだろう。
それに気づいた昴輝は口元を緩ませて、日向に言った。
「鳥族の分際で偉そうに。」
「はぁ!?お前――」
「けど、お前のお陰で少しはマシになった。……ありがとう。」
「おう!」
昴輝の最初の言い方に気に入らなかった日向だが、昴輝のお礼を聞けてよかったのか、満面の笑みを見せる。その時、結紀の生命の危機を感じ取った昴輝は驚きの表情を浮かべ、彼女がいる場所の方向を見る。
「どうした?」
「……結紀が危ない!」
昴輝の言葉を聞いた日向の表情も一気に変わる。緊縛した空気と変わった。昴輝は、息を吐き出して他の吸血鬼に指示を出す。
「聞け!今から戦闘の準備しろ!頭首が危ない!気配を消し、頭首の場所に移動し周囲で待機しろ!」
昴輝は、声を張り上げ伝える。すると、周囲にいた吸血鬼達は慌ただしく戦闘準備を進める。それを感じ取った日向も、鳥族達に伝えようと伊月を呼ぶ。
「伊月、いるか!?」
「どうした、日向?」
まだ、状況を把握していない伊月は日向に質問をする。