第8章 思い出の欠片
「ここは、吸血鬼族と鳥族の領土の境目だ。まして、スナイパーは接近戦が何よりも弱点。接近戦を得意とする吸血鬼に勝てると思っているのか?スナイパーの周りには、気配を消し吸血鬼が配置されている。」
昴輝が説明をする。この説明を聞いた狐族達は息を呑み込む。どうやら結紀達の方が上だったらしい。いつでも、吸血鬼達はスナイパーを殺せる状況になっている。
有利かと思いきや、一気に不利になる状況へとなってしまった狐族。笠松にとってこれは、苦しい判断になる。実は、結紀に呼ばれる前の出来事だ。
広場で、茫然と空を見上げる昴輝。結紀と契約をしている為、何となくで気配を感じている。ここから少し離れていることにも気づいているが、どうも追いかける気力にはならなかった。
それだけ、彰が亡くなったことがショックだということだ。茫然と空を見あがている姿を発見した日向が声を掛けてきた。
「よっ、お前んとこの頭首を追いかけなくていいのか?」
「いや…今はいい。互いに時間が必要だ。」
やはり日向も気づいていた。恐らく、緑間もこの場所から離れたからだ。昴輝の言葉はいつもよりも力がなかった。日向は、そうか…と呟くように言ってはそれ以上は何も言わなかった。
すると、日向は昴輝の隣に座る。その事に対して、昴輝は不思議に思っていたが、問い掛ける気力にもならなかった。心の一部が空っぽになった感覚だ。
「……お前ら3人は随分、仲が良かったみたいだな。」
「あぁ…長く一緒にいたからな…。」
日向の問い掛けに、昴輝は自然と話す。