第8章 思い出の欠片
華鶴のダメージはあまりにも大きい。華鶴は、その場に膝を地面につき崩れる。昴輝はいまだに華鶴を放そうとはしない。それを見ていた華菜は表情が厳しくなる。
「華鶴を放しなさいよっ!!」
華菜の声は荒々しかった。結紀は、表情を変えることなく華菜を見る。その瞳は、とても冷徹。瞳を見てしまえば、こっちが凍ってしまうのではないか、と思ってしまう。華鶴を人質にしたのだ。
そして、結紀は笠松の方を向き言った。
「狐族の頭首よ、交渉しよう。」
「交渉だと?」
そう結紀は笠松と交渉をするために、華鶴を人質にしたのだ。交渉という言葉を聞いた笠松の表情は、より一層のこと厳しくなった。
「スナイパーの攻撃を今すぐやめて、撤退しろ。そうすれば、この者を解放しよう。できなければ、この者の足を折る。」
「……。」
笠松は結紀の問い掛けに、すぐ応じなかった。チラっと華鶴を見れば腹部から大量の血が流れ出している。少しでも遅れれば、華鶴は本当に助からない。よく見れば笠松以外の狐族も厳しい表情を浮かばせていた。
結紀の言葉は残酷だ。最後の瞬間まで生かせて、狐族の目の前で拷問をするような形となっている。
「何言ってるのよ!スナイパーの方が行動が速いわ。交渉の意味なんてないのよ!」
華菜は叫ぶように結紀に言う。しかし、結紀は口元を僅かに緩ませ、ふっ…と僅かに笑う。そして、表情を戻して言った。
「確かに、スナイパーは厄介。だけど……我達がそれに対して何もしてないと思っているの?」
「え…?どういうこと…?」
結紀の言葉に思考停止になる華菜。