第8章 思い出の欠片
緑間は結紀を降ろす。凄い…と思わず言葉を漏らす結紀、ここに咲く花たちはとても美しかった。まるで、争いのない世界という感じだった。
「ここは、鳥族の領土と吸血鬼族の領土の境目なのだよ。それに、ここの花は季節関係なく咲いているのだよ。」
「………綺麗。」
そう緑間の言う通り、花が咲いている場所はお互いの領土の境目のため誰も近付かないところだ。だから、気づかれないのだろう。よく見れば、本当に花の種類は様々で季節が関係なかった。
結紀は、その場に座り込み一つの花を眺める。結紀の心の中で、懐かしいと感じてしまった。吸血鬼族の領土でも、小さなお花畑があった。
そのお花畑で、小さい頃よく結紀、昴輝、彰の3人で遊んでいた。その事を思いだしたのだ。その時、緑間は、花の冠を作り結紀の頭にのせる。その行動に、結紀は目を丸くして固まってしまう。
「やはり、よく似合うのだよ。」
緑間が、照れくさそうに結紀に言う。その言葉で、結紀の脳裏であの頃を思い出す。
よく結紀が花を摘み、彰に渡していた。すると、お返しなのか彰が花の冠を作り結紀にプレゼントをしていた。
「結紀、よくにあってるよ。きれいな、はなよめさんになるね!おおきくなったら、ぼくが、はなむこになって、結紀をむかえにいくね。だって、だいすきだから!」
彰の言葉を思い出した結紀は、心がきつく縛られる感覚に陥りかなり苦しくなった。そして、結紀の頬には涙が流れる。