第7章 護るべき者
そして、彰は炎に包まれ消えてしまった。魂ごと消滅をしてしまった。結紀に告白をして消えた。これほどの残酷なことはないだろう。結紀の返事を待たずに消えた。
結紀の心の一部が無くなってしまったような感覚だった。だけど、彰は自分が消える瞬間まで微笑んでいた。結紀の服には、彰の血がべっとりと付いていた。結紀は、その血を凝視していたがやがてヨロヨロと立ち上がるのだ。
「……結紀?」
昴輝が結紀の名前を呼ぶが、彼女の表情を見た瞬間に何も言えなくなった。怒りの表情をしているのにも関わらず、瞳は泣いていた。結紀は近くにあった太い木に向かって、右足で思いっ切り蹴る。すると、太い木はドガンっ!と大きな音を立てて倒れた。
「………許さない…。」
結紀はそれだけを呟いて、何か切れたかのようにその場で力なく倒れた。結紀!と昴輝は叫びながら近づいていく。またも高熱を出したのではないか、と思ったのだ。
だが、結紀の呼吸や体温を調べれば正常だった。ということは、今回の戦闘でかなり消耗したということになる。昴輝は、結紀…と弱々しく名前を呼び優しく抱き締める。心の傷は、昴輝にとってもかなり深かった。
すると、日向が苦しそうな表情をしながらも静かに言った。
「とりあえず、戻ろうぜ。治療が必要だろう…。」
「………あぁ…。」
日向の言葉で、昴輝は結紀を抱え、日向達と一緒に治療室へと向かうのだった。