第7章 護るべき者
「くそっ…速すぎて…。」
さすがの昴輝も悔しそうな表情を見せる。視界でその"何か"を見ようとしても不可能に近い。だが、逆に言えばここまでの能力が高いというのは、トップの族と判断が出来る。
「…これは、鳳凰族の誰か…だね。」
彰が呟くように言う。族の種類は、特定はできる。だが、人物の特定するのはほぼ不可能に近い。結紀は、目を瞑り気配のみで探り始める。心を無にし、風の音、草の音、水の音を完全に消す。
そして、相手の動きを感じるようにする。相手の動きを読み取る。その瞬間、結紀を開き右足で後ろを蹴る。ドガンっ!と大きな物音を立てて、鳳凰族が吹き飛ぶ。結紀、昴輝、彰は、その場所に注目する。
「…っ。流石に、今の蹴りはキツいな…。」
「……気配を消し、吸血鬼族の領土に入るのは、なかなかだね。」
「…オレの得意分野でもあるからな。」
そう、吹き飛ばされたのは谷矢だった。気配を消し、吸血鬼族の領土に入ったことに褒める結紀。それもそうだろう、あの結紀が感知しなかった相手なのだから。
谷矢は、腹部を押さえながらヨロヨロと立ち上がる。谷矢の背中は、立派な鳳凰の証である翼が生えていた。その立派な翼を切り落とそうと考えていた昴輝。その時、結紀が昴輝の前に出る。
「おいっ!」
「…頭首、ここは我に任せてもらえませんか?頭首はお戻り下さい。」
「はっ?お前、何を…?」
流石の昴輝は驚いていた。それだけではない、彰もそうだった。…結紀、何を考えてるんだ?お前が頭首なくせに…、そう思いながら昴輝の心の中で不安が大きくなってきた。