第7章 護るべき者
「邪魔!!割れて!!」
叩いても叩いても見えない壁は割れる様子がなかった。気がつけば、結紀の手は血で真っ赤に染まっていた。見えない壁も赤く染まり始めていた。
彰、彰!っと声に出ているのか分からないが、結紀は彼に呼び掛ける。だが彰の反応が全くない。突如、結紀の頭の中に"死"という文字が浮かんだ。
嘘だ、嘘だ、というばかりに結紀は何度も壁を叩く。そして、結紀の瞳が金色にギラギラと光る。それだけ本気だということだ。それで何度も壁を貫こうとするが弾かれるばかりだ。
彰の姿ばかりだけかと思ったら、その奥に"誰か"の姿があった。その"誰か"はわからない。顔も隠れてしまっている為、判断ができなかった。
判断できなくても分かる。その"人物"が彰を殺したのだと。普段の結紀なら平常を保つのだが、今回はそうはいかなかった。届くはずもないのに、彰に向かって手を伸ばす。
「嫌……いや、だぁぁぁぁぁっ!!」
結紀は喉が裂けてしまうような声を上げた。
「結紀っ!!」
「っ!?」
突然と名前を呼ばれ結紀は目を覚ます。結紀の目の前には、心配そうな表情を浮かべている昴輝と彰の姿だった。結紀に声を掛けていたのは昴輝だった。結紀は2人の姿を見て、あ…と声を僅かに発することしかできなかった。
「おいっ!どうした?」
「珍しく、かなりうなされてたけど……。」
「我は………頭首として……何も……。」