第7章 護るべき者
ついてくる2人を見て結紀は何も言わない。黙っていた。そして、無言のまま部屋から出ていった。その様子を日向達も黙って見ていた。
結紀が向かったのは、静かな森の中。そして、寝心地が良さそうな木に近より座って寄りかかる。空を見上げれば、雲一つもない快晴だった。昴輝と彰も近くで待機をする。
丁度良い、風の良さで結紀の眠気を誘う。だから、いつの間にか、結紀は瞳を閉じ眠ってしまった。その様子を昴輝と彰が穏やかな表情で結紀を見守っていた。
結紀は、水に沈んでいく感覚で落ちて行った。それも自分の体が溶けていく感覚だ。ゆっくりと目を開くとそこは暗い世界が広がっていた。先の先が全く見えない。こんな夢を初めて見た。
結紀はゆっくりと体を起こし辺りを見回す。何もない。何も聞こえない。ここの空間だけ時が止まっているようにも感じられる。すると、ジャボーンっと音を立てて何かが沈んでいくのが見えた。
結紀が目を凝らせ、その姿を見た瞬間…目を見開く。開いた口が閉じなかった。
「な、ん……で……?」
その言葉がやっとだった。だって、結紀の目の前には血だらけの彰の姿があったからだ。彰は動かない。指一つも動かない。結紀は状況を把握しようとして、彰に近づこうとした。
しかし、行けない。見えない壁が結紀を通さない。結紀の手は恐怖の影響でなのか震えていた。そして、何度も何度も見えない壁を壊そうと叩く。