第2章 春 出会い
そして迎えたゴールデンウィーク。
連休は母に言いくるめられ実家に帰宅。
予定のない休みをダラダラと過ごす予定…だった。
「夏乃ねー!」
勢いよく自室の扉を開け布団をひっぺがされる。
『ちょっ!何よ冬乃(ふゆの)!あんた今日学校休みなんじゃないの?』
上半身を起こし伸びのをしているとそのままガシガシ揺さぶられる。
「今日友達のとこで勉強会なのに教科書忘れてきたー!ペンケース忘れてきたー!取りに行きたーい!」
私のことガシガシ揺さぶっているのは妹の冬乃(ふゆの)。
烏野高校の2年生。
『電車で取りに行けばいーじゃん。』
「今から取りに行ったら電車1時間待ちだよー!無理無理!そんなに待てないよー。」
だったら忘れ物するんじゃないよと小言を言いながらスマホで時間を確認する。
8時45分。
ここから烏野高校まで車で15分。
時間を逆算しながら準備をする。
『着替えてくるから食パン焼いててー』
「りょ!」
軽やかに敬礼しながら冬乃は台所へ駆けていった。
さすがの東北でも今日はあったかくなるっていってたなーなんて昨日の天気予報を思い出しながら着替えを始めた。
黒のレースのタンクトップに白の半袖ロゴT。
デニムのスキニーパンツは7部丈のものを選んだ。
クリーム色の薄手のロングカーディガンをはおり財布とスマホ、車の鍵を小さなショルダーバッグに入れると部屋を出た。
洗面所に向かうと、先日雪乃に買ってあげた基礎化粧品を拝借し塗り込んだ後、腰まである長い髪の毛を適当なシュシュで一つに束ねた。
タイミングよく焼きあがったトーストをほおばり牛乳で流し込むと玄関で騒ぐ妹のところへ向かったのだった。