第34章 決勝、その後。
『おわったね…』
「ですね…」
私はそっと蛍君の右手を見る。
『手…痛くない?』
試合中に怪我をした手は出血こそ止まっているが色が変わり、見るからに痛々しい。
「痛みはありますけど大丈夫ですよ?それより…」
蛍君は私の手を取ると無理やり手を開かせて手のひらを見る。
私の手のひらには無数の小さな切り傷が刻まれていた。
『試合中爪で切っちゃってたみたい…』
蛍君はため息をつき、私の手のひらを自分の口元に持っていく。
そして傷口にちゅっちゅっと音を立て吸いついた。
「あんまり怪我しないでくださいよ…心配だから…」
私の手のひらの傷よりももっと酷い傷作ってるの誰よ!
『私も気をつけるから…蛍君も怪我しないで…?』
「それは無理ですね」
返答早い…
「高校にいる間は確実にバレーに関わっていくので気をつけるつもりではいますが…」
『バレー…楽しい?』
夏の合宿で光太郎が聞いた質問。
あの時はイマイチな反応だった蛍君。
今聞いたら、どんな反応が返ってくるんだろう。