第33章 決勝戦vs白鳥沢
鞄を持ち、お手洗いに向かっていると前からきた人に声をかけられる。
『編集長!今日は色々とありがとうございました。』
「いやいや大丈夫。それで、ちゃんと見れたかな?
『編集者』としてでなく『烏野の関係者』として。」
そう、実は私は今日、編集部の代表としてでなく、応援として会場に来ていたのだ。
きっと今日の試合は編集者として見れない。
そう思った私は昨日、編集部に帰った後編集長にその旨を伝え、急遽勅使河原さんにお願いを申し出たのだ。
今度食事奢るって言ったら勅使河原さんすかさずOK出してくれたから良かった。
「いい試合見せてもらったよ。
それと君の良い顔もな?
いやー青春だねー?
恋に一喜一憂してる君を見てちょっと羨ましくなったよ。」
うそ…
『へ、編集長?どこらへんを…』
「『彼』が怪我をしたあと君が観客席から飛び出していく姿も、戻ってきてからずっと心配そうに見つめてる姿も、さっき廊下で彼に抱きついて泣いてる姿も見たかな?」
恥ずかしいところ全部見られてる…
穴があったら入りたい…
「明日はゆっくり休んで明後日からまた仕事、頑張ってくれよ?
そろそろ記事まとめないといろんなところからクレームでそうだからな?」
私は去っていく編集長の背中に深くお辞儀をし、化粧を直すためにお手洗いに向かった。