第33章 決勝戦vs白鳥沢
『蛍君‼︎』
手に持っていたパンプスを放り、蛍君の胸に飛び込んだ。
疲労困憊の蛍君は私を支えきれずに尻餅をつく。
「ちょっ…夏乃さん。みんないる『蛍君…けえくん……けーくん』
1度流れた涙は止まらない。
「何してるんですか…
そんなに泣いたら化粧取れますよ?」
『けーくん……て…』
蛍君はため息をつきながらも私の頭を撫でる。
「今のところ大丈夫ですよ。」
『良かった…』
「感動の再会の途中悪いんだけどな…?
この後ウォームダウンして表彰式なんだわ」
繋心先輩の声で我に帰る。
『すっすいません‼︎』
私はすぐさま蛍君の上から退き蛍君に手を伸ばす。
蛍君は一瞬躊躇したけれど私の手を取り立ち上がる。
「じゃあウォームダウンいくぞー!」
そう言いみんなはゆっくり歩いていく。
「椎名さん」
ふと声をかけられ、振り向くと武田先生がいた。
『武田先生…
取り乱してしまってすいません…』
先生も目が赤い
「いえ、表彰式が終わったら昨日の居酒屋で食事会なんですが…行きますよね?」
『いいんですか?』
「もちろん!初めから人数に入ってますから。事後承諾になってしまいましたが…』
初めから人数に入れてもらえていたことに素直に喜ぶ。
『いえ、嬉しいです。』
「あ、それと…」
ちょっと歯切れの悪い言い方をする武田先生を見ると気まずそうに笑う。
「お化粧取れてるので1度トイレで確認してきた方が…」
嘘!
やっぱり取れてる⁉︎
朝、気合い入れてメイクしなきゃよかった!
『すいません‼︎直してきます!』
私は武田先生に一礼すると一度観客席に自分の鞄を取りに戻った。