第33章 決勝戦vs白鳥沢
蛍君が影山君に声をかけるとライト側に走り出す。
ブロード。
いや、囮だ。
蛍君が囮として走った。
数秒だけど時間を稼いだ蛍君。
レフト側ではその隙に田中君がスパイクを決めた。
「ブレーーーーイク‼︎‼︎」
烏野16-白鳥沢15
このタイミングで白鳥沢はタイムアウトを使った。
「ほんっと雑食だな烏野。眼鏡のブロードなんて初めて見たぞ。囮だけどな。」
岩泉の言葉に及川君はため息をつきながら答えた。
「俺達は完成度の高い時間差攻撃を易々と捨てられないし、白鳥沢は個人の強さを極めるスタイルを曲げない。それで今強豪と呼ばれてるわけだしね?」
前を向いていた及川君は何かを考えるように上を向いた。
「でも、烏野には『守るべきスタイル』なんてないんだ。強豪って呼ばれた時代にはあったのかもね?
だから新しいことに手を伸ばすことに躊躇がない。あの奇跡みたいな神業速攻でさえすぐに捨てて新しくしてきた。」
そう。
勝利に飢えた烏は
自分達を強くし
今日までのし上がってきた。
「古く堅実な白鳥沢。
新しく無茶な烏野。」
上をむいていた及川君は顔を前に戻し、コートを睨むようにして言った。
「どっちが勝ってもムカつくかどっちも敗けろ。」
「うんこ野郎だな。」
『うん。クソ野郎ね。』
「岩ちゃんに言われるのは嫌だけど夏乃さんに罵られるのはいいかも!」
「クソ川黙っとけ。」
不覚にも笑ってしまった私。
苦しかった気持ちが、少しだけ楽になった。